ウェルビーイングの考え方

WHO憲章において,健康(health)は単に病気や虚弱がないということではなく,「精神的・身体的・社会的に完全に良好な状態(a state of complete physical, mental and social well-being)」と定義されています。また,WHOの用語集では「ウェルビーイング」を「ポジティブな状態(a positive state)」と表現しています。

これらの定義を素直に解釈すれば,「完全に良好でポジティブな状態」でなければウェルビーイングとは言えない,という印象を受けます。

では本当に,「完全な良好さ」や「ポジティブさ」を満たしていない人は,ウェルビーイングから除外され,一生ウェルビーイングな状態にはなれないのでしょうか?

たとえば,慢性的な病気や障害を抱えている人や,貧困や孤立といった社会的課題に直面している人,あるいは不安や抑うつを感じている人は,ウェルビーイングに達する可能性がないのでしょうか。

障害者はウェルビーイングになれないのか?

具体的な例を考えてみましょう。

たとえば,ある人が後天的な事故で脚を失い,日常生活において車いすが必要となったとします。事故前の仕事は身体的な機能を必要とするものであったため続けられず,再就職も難航しています。現在は親の支援によって生活が成り立っているものの,その支援がいつまで続くかわからず,将来への不安が尽きません。さらに,自らの障害を理由に,結婚や家庭を築くことも難しいと感じているとすれば,このような状況にある人は「一生ウェルビーイングにはなれない」とされてしまうのでしょうか。

生きがいや喜びを見出せるか

もちろん,身体機能の制約や経済的な不安,社会的な孤立は,ウェルビーイングを損なう要因になり得ます。しかし,本人が「障害を受け入れ,それでもなお生きがいや喜びを見出しながら生きている」と感じているなら,その状態をウェルビーイングと認める余地があるのではないでしょうか。

現に,障害を持つ当事者の中には,「障害を得たことで人生の意味が変わった」「本当に大切な人や価値に出会えた」と語る人も少なくありません。

結論:ウェルビーイングは「完全」でなくてよい

ウェルビーイングとは、「理想状態」ではなく、個人の主観や価値観を踏まえた、多様で柔軟な概念であるべきです。身体的・精神的・社会的に多少の困難を抱えていても、それらを受け入れながら「おおむね良好」と自ら感じているのであれば、その状態もまたウェルビーイングと呼ぶにふさわしいのではないでしょうか。

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