心理学者 Corey L. M. Keyes(1998)は、個人の幸福を「単なるポジティブな感情」や「心理的健康」にとどめず、「社会とのつながり」にも目を向けて、「社会的ウェルビーイング(social well-being)」という概念を提唱しました。WHOのウェルビーイングの定義にも社会的ウェルビーイングが含まれています。
社会的ウェルビーイングの5要素
Keyesは、社会的ウェルビーイングを以下の5つの側面で構成しています。
社会的統合(Social Integration)
自分が社会の一部であるという感覚。
例:自分の価値観や行動が、周囲の人々や地域社会と調和していると感じる。
- 自分が「社会の一員」であるという感覚。
- たとえば、「町内会で意見が言える」「職場でチームの一員として機能している」など、排除されていないことが前提です。
社会的貢献感(Social Contribution)
「自分が社会にとって役に立っている」と感じること。
例:自分の仕事や活動が誰かの助けになっていると感じる。
- 「誰かの役に立っている」「自分の活動に意味がある」と感じること。
- これは、ボランティア活動、育児・介護、仕事、地域との関わりなど、形式を問わず発生し得ます。
- たとえば、「子どもを育てている」「自治体の清掃活動に参加している」「同僚を助けた」といった行動のなかで、自己効力感(自分が何かできるという感覚)や目的意識(purpose)が高まります。
「自分の存在が社会に意味を持っている」と感じること(=Purpose)は、社会的貢献感や統合感を通じて強化されます。これは、心理的ウェルビーイングでも重視されている「Purpose in Life(人生の目的)」とつながります。
社会的受容(Social Acceptance)
他者に対する信頼感や、社会に対する肯定的な態度。
例:人々には基本的に善意がある、と思える感覚。
社会的実在感(Social Actualization)
社会が発展可能である、成長できると信じられる感覚。
例:この社会はより良くなっていくはずだ、という希望。
社会的理解(Social Coherence)
社会や世界の動きを意味あるものとして理解できる感覚。
例:社会の出来事には理由があり、自分なりに理解できる。
まとめ
「自分の存在をどう肯定的にとらえるか」ということが社会的ウェルビーイングのポイントになります。引退した高齢者、育児で短時間勤務になった人など、無職の人などは社会的な役割が薄れがちでウェルビーイングが下がりやすくなります。
しかし「お金を稼ぐこと」だけが社会的ウェルビーイングにつながるわけではありません。ボランティア活動、地域活動、オンラインでの支援、家庭内の役割など、どんな形でも「役に立っている」という感覚を持つことが社会的ウェルビーイングを向上させます。そして、社会的ウェルビーイングの低下に伴う抑うつの予防や自己肯定感の維持に重要です。



