いいえ,ウェルビーイングは「一切のストレスや悪い感情がない完璧な状態」を意味するものではありません。むしろ,「人生に困難やストレスがあっても,それでもなお意味や充足感を感じられる状態」こそが,「現代のウェルビーイング」の概念に近いとされています。
なぜ「ウェルビーイング=完璧さ」ではないのか?
現実には完璧な状態など存在しないから
人は誰でも老い,病気になり,人間関係の悩みを抱えます。将来の不安がゼロになることも,すべての人から尊敬されることもまずあり得ません。それを「達成しないと幸せになれない」と考えるのは,かえって逆効果です。
ストレスや不安も人間の感情の一部
セリグマンのPERMAモデルでも,「ポジティブ感情」は重要ですが,ネガティブ感情をすべて排除せよとは言っていません。むしろ,怒り・悲しみ・不安も含めて,それらとどう向き合うかがウェルビーイングの一部です。
「自分にとっての意味」や「納得感」が中心になるから
ある人にとっては,困難な仕事に取り組むこと,障害を抱えながらも家族との時間を大切にすることが,非常に大きなウェルビーイングである場合もあります。つまり,「外から見て完璧」より,「自分の内側で納得できる」状態が大事なのです。
現実的なウェルビーイングは違うから
WHO憲章(1946)は,「精神的・身体的・社会的に完全に良好な状態」をウェルビーイングと定義しました。これは理想を掲げた言い方で,現代では「達成不可能な理想主義すぎる」とも批判されています。その後の研究では,「欠損がないこと(病気がないこと)ではなく,ポジティブな要素があること」に重点が移っています。
まとめ:ウェルビーイングとは?
ウェルビーイングとは,「すべてが完璧」な状態ではなく,困難があっても,自分の人生に意味や満足を感じている状態のことです。悪い感情があっても,それを受け入れたり乗り越えたりできる力こそが,ウェルビーイングを支えます。
このような視点に立てば,たとえ身体的な制約や社会的困難があったとしても,日々の生活の中で「自分らしく在ることができている」「人生に満足している」と本人が感じていれば,それは十分にウェルビーイングの状態であると考えられます。
つまり,「完全に良好でなければならない」という硬直的な定義ではなく,「それぞれの人にとっての満足のかたち」「良好と感じる基準の多様性」を尊重すべきなのです。



